<まる見えリポート>他県に類似の名物名所 三重県内観光、差別化に苦慮

【大勢の観光客でにぎわうおかげ横丁=12月、伊勢市で】

三重県内では、伊勢神宮の式年遷宮や主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)など大型イベントが続き、県内観光入り込み客数は順調に伸びてきた。その陰で、他県では「忍者」などを利用した類似の観光名物や名所が次々と誕生している。観光関係者は他県の状況に「差別化しなければならない」と危機感を募らせている。

29年度の県内観光入り込み客数は統計を開始した17年度以来、過去最多の4219万5000人。28年度に続き、2年連続で過去最多を更新した。伊勢志摩サミットやお伊勢さん菓子博の開催により、伊勢志摩を中心に観光客が増加したとみられる。

県内の観光入り込み客数のピークは式年遷宮に合わせて20年ごとにやってくるのが通例だった。遷宮後も客足を伸ばそうと25年度に県観光キャンペーンが始まり、公募で選ばれたシンボルマークを使って忍者や伊勢神宮など県内の観光地をPRしてきた。

県内の観光地がにぎわう中、県外では類似の観光名物や観光地が出現した。一例がクールジャパン・コンテンツの一角を担う「忍者」。海外でも抜群の知名度を誇ることから、街おこしの有力な手段となってきた。神奈川県や愛知県など各地の自治体が注目し、忍者隊の結成や、忍者イベントの開催に取り組んでいる。

愛知県は27年に「徳川家康と服部半蔵忍者隊」を立ち上げた。同県観光振興課によると、家康の伊賀越えを助けた「鳴海伊賀衆」が由来という。名古屋城や中部国際空港(セントレア)などで黒装束で観光客をもてなし、忍者ショーを披露する。

同県の推計では、外国人観光客は27年度が約193万人だったのに対し、29年度は約255万人。同県観光振興課は「忍者隊のPR効果が外国人観光客の増加にどれくらい影響しているかは分からないが、一役買っているのは確か」とした。

他県の「忍者推し」に警戒感を募らせるのが、忍者の発祥地を自負する伊賀市。代表的な観光地である伊賀流忍者博物館の来館者数は減少に転じていないが、同市で毎春開かれる「伊賀上野NINJAフェスタ」の観光客は今年、過去11年間で最少となった。全国的な広まりを無視できなくなっている。

市観光戦略課の担当者は「忍者の観光地が分散されたことで多少の影響は出ている。同様のイベントや忍者隊が誕生していることを真剣に受け止めなければならない」と強調。「埋没しないよう検討しているが、なかなか進んでいない」と差別化に悩む。

愛知県では忍者隊だけでなく、今年3月末、名古屋城近くに城下町を再現した観光施設「金シャチ横丁」も誕生した。伊勢神宮内宮前の「おかげ横丁」を手本に名古屋市が企画。「なごやめし」を提供する飲食店や土産店などが営業している。

ただ、模倣された側のおかげ横丁の広報担当は「特に危機感は持っていない」と静観。おかげ横丁は唯一無二の存在である伊勢神宮前にあるのが特長で、その強みを生かしてきた。おかげ参りが流行した江戸後期―明示初期の建物を再現し、本物志向の観光客を取り込んできたという自負もある。担当者は「参考にされることはあっても、伊勢神宮前という要因はまねできない」とみる。

県観光局は「他県でよく似たコンテンツが生まれている」と危機感を募らせる。一方で、「三重県にはあくまで本物がある」と強調。伊賀、甲賀両市が申請した「忍びの里 伊賀・甲賀」は昨年、日本遺産に選ばれ、忍者発祥の地としてお墨付きを得た。

同局は「入り口は何でも良い。他県をきっかけに三重県で本物を見てみたいと思ってもらえるよう、しっかりPRしたい」とししている。