高校野球100回目の夏<上> エース頼みから脱却へ 地方大会もタイブレーク採用

【投球練習を行う菰野高校の(左から)田中法彦投手、岡林勇希投手。菰野では完投能力のある両投手を2本柱に選手権に挑む】

潮目が変わった瞬間だった。今年4月の春季東海地区高校野球三重県大会準決勝のいなべ総合学園戦。先発し、延長十二回まで0安打3失点で粘ってきた菰野の3年生エース田中法彦投手が、3―3でタイブレークに突入した十三回表、いなべ総合打線につかまった。

無死一、二塁から始まったこの回。5番打者から4連打を浴び一挙7点を失うと、アウト1つ残して仲間にマウンドを譲った。「点を取られた以上にマウンドを降りた悔しさの方が強かった」。外野の守備位置に入っても何度も顔を拭う姿が印象的だった。

一方のいなべ総合は先発の2年生土井海渡投手、3年生の石川拓哉投手の継投で菰野の追撃をかわして決勝進出を決めた。六回から継投し、延長十三回を1失点で切り抜けた石川投手は試合後「タイブレークは意識せず投げた」と淡々と話していた。

日本高野連は今年100回を迎える全国高校野球選手権記念大会で、延長十三回以降、人為的に走者を置いて試合の早期決着を促すタイブレーク方式を初めて導入する。投手の故障予防が主な目的で、2017年から春季大会に限り実施してきたが、今年からセンバツ大会と全国高校選手権、さらにその地方大会でも一律採用する。これにより、県内でもエース1人に頼る戦い方からの脱却が進む。

昨年夏の甲子園出場校で、この春22年ぶりに県大会を制した津田学園は夏に向けて投手を最低5人用意するという。「高校野球もデータ分析が進む。1人の投手が攻略されたらそれで終わり」とエース頼みの危うさを指摘する佐川竜朗監督。この春の県大会決勝は、4人の投手を投入し、いなべ総合を下した。

それでもエースへの信頼は不変だ。いなべ総合の尾﨑英也監督は今大会、抑え役の石川投手に背番号1を託す予定。「試合終了の時マウンドにいるピッチャーこそエース」と話し、接戦に強く、試合を締めくくる投球が期待できる石川投手への期待をにじませる。

多彩な投手陣を背景に、複数の先発完投型投手を準備する菰野の戸田直光監督も、エースナンバーを背負う田中投手の存在感は別格と語る。「一番いいピッチャーに投げさせ、試合を託したいという思いは強い」と絶大な信頼を寄せている。

今月13日、第100回全国高校野球選手権三重大会が開幕する。100年目の節目を迎え、球児を取り巻く環境の変化と、その中でも変わらない高校野球の今を紹介する。