2018年6月26日(火)

▼麻生太郎副総理兼財務相が「新聞を読まない人は全部自民党(の支持)だ」と昨秋の衆院選を分析した。またお得意の早とちりか独自の解釈をしていないか。自民党得票率が高かった30代前半を「新聞を読まない世代」と決めつけてのことだから、気を悪くした同党支持者もいたのではないか

▼「インターネットや放送、通信を当たり前のように使いこなせる若い世代の自民党支持率が高いということが、ものすごく大事だ」という分析に反論はあるまい。使いこなしている世代ではないが、ネットの検索機能は辞書や書籍などを探す労力からうそのように解放してくれた

▼パソコン、ネット、SNSを当たり前のように使いこなせる世代の知識の豊富さ、能力の高さは疑いようもない。ピンポイントで知りたい情報が得られる社会は、すでに旧世代とは一線を画す社会に違いないが、新聞を読まない世代がITをどこまで使いこなしているかは異論もあるのではないか

▼フェイクニュースの横行はそのことを物語る。麻生副総理はワイマール憲法を誰にも気づかれずにナチス憲法に変えた手口を学べと発言して、撤回に追い込まれた。旧世代である同氏のネット、通信への賛歌には一方的伝達手段へ共感も見え隠れする

▼「新聞がなくて政府がある社会と、政府がなくて新聞がある社会では、迷わず後者を選ぶ」と言ったのは米国独立宣言を起草したジェファーソンだが、大統領就任後は「新聞を読まない人の方が、読む人より真実をよく知っている」。「絶対的権力は絶対的に腐敗する」ともいう。麻生氏の任期も長い。