<まる見えリポート>3次元地図、避難の助けに 皇大作成、ドローンで空撮

【皇學館大学の学生と教員が開発した南伊勢町神津佐地区の3次元防災地図(同大学提供)】

東日本大震災の発生から11日で7年を迎えた。南海トラフ地震で大きな被害が予想される伊勢志摩地域の皇學館大学(三重県伊勢市)では、南伊勢町で防災活動に取り組む学生と教員らが、ドローンの空撮写真を活用した3次元地図を作成。地形の起伏や急斜面の傾斜角など、平面図では分からない地域の特徴を住民が理解するのに役立てる。

大学の地域貢献活動の一環として防災活動に取り組むのは、現代日本社会学部4年の井坂僚平さん(22)ら学生4人と、同大教育開発センターの近藤玲介准教授。一昨年11月から、同町古和浦や棚橋竈(たなはしがま)、神津佐(こんさ)、東宮(とうぐ)地区などで、ドローンによる空撮や集落の幅員などを調べる町歩きを実施し、地区ごとに3次元マップを作成した。

漁師町の同町では、海岸部に集落が密集しており、災害時には家屋や塀などが倒壊し、計画通りの避難が困難だと指摘されている。3次元マップは、海岸から集落までの距離や高台の避難場所と自宅との高低差、避難道の位置、傾斜角などが立体的に表示されるため、住民が地域の特徴を理解しやすい。地図は、ドローンで撮影した集落の静止画像を専用ソフトで編集し、パソコン上で立体化させた。

10日には同町五ケ所浦の町民文化会館で町主催の防災イベントがあり、井坂さんらが3次元マップを紹介。集落の裏山に避難場所を設けている神津佐地区の地図を見た参加者は「集落の裏にある避難所と避難道の位置がよく分かる。階段の角度が急なので災害時に登れるか心配」と話していた。

また、学生らはドローンで空影した地域の動画も公開した。参加者は上空からの集落映像を食い入るように見つめ「海までの距離がよく分かる」「家の前の道がこんなに狭いとは」など、興奮気味に感想を口にしていた。

近藤准教授は「まず、地域を知ることが一番大事。防災対策というと固く考えられがちだが、3次元地図やドローンで地形の特徴などを分かりやすく伝えたかった。反響は予想以上」と手応えを語った。

今後は各地区でワークショップを開き、住民に活動成果を報告する。学生が町歩きで調べた幅員を3次元地図に反映できるよう工夫する。地図やドローンの空撮データはDVDなどに保存して自治会に配る予定。

また、10日の防災イベントでは、参加者から「自分の住んでいる集落の避難場所は分かるが他の在所については分からない」という意見も出た。被災時に土地勘のない場所にいることも考えられるため、近藤准教授は今後の課題に挙げた。

その上で「実際には自分の住んでいる地域以外の防災地図を理解するのは難しい。ドローンの空撮映像や3次元マップなら視覚的に誰が見ても分かりやすいので、対象地区以外の町民に見せても関心を持ってもらえると思う」と話している。