紀宝町長選の課題 「新宮紀宝道路」も争点に 現計画ルートか変更か

【閑静な住宅地。新宮紀宝道路のルート計画上、立ち退きを余儀なくされる=紀宝町鵜殿で】

【南牟婁郡】三重県紀宝町と和歌山県新宮市を結ぶ自動車専用道路「新宮紀宝道路」(2・4キロ)。建設中の同道路を巡って、ルート変更を求める住民の声が上がっている。任期満了(2月4日)に伴う紀宝町長選が23日に告示されるが、ルートに関して立候補予定者の意見が分かれており、選挙の争点の一つとなりそうだ。

同町長選には、21日現在、現職の西田健氏(69)と町議の平野美津子氏(70)=50音順=が立候補を表明している。同道路のルートについて、西田氏は国の現計画のルートを変更しない方針。一方の平野氏は路線変更を訴えている。

同道路は、紀伊半島を一周する近畿自動車道紀勢線の一部。和歌山県側熊野川河口部の新宮市あけぼのから熊野川河口大橋で川をまたぎ、紀宝町神内の国道42号紀宝バイパスに至る。橋や盛り土で整備される。平成25年に事業化され総事業費約210億円。開通時期は未定。

国土交通省が発表したルートは、同町鵜殿地区の住宅地を貫く。ほこりや騒音、排気ガスなどで生活環境が悪化することを懸念した同地区の住民は、27年に「新宮紀宝道路の路線変更を求める会」(現会員数・16人)を立ち上げ、国交省紀南河川国道事務所(和歌山県田辺市)に路線変更を求める陳情書を提出するなど要望活動を行ってきたが、国は路線変更はできないとしている。

同会共同代表の佐藤守彦さん(81)は「(ルート上でなく)周辺に住む人らは生活環境が悪化するのみで、補償金も出ない。立ち退きには80代の高齢者も多く、今さら別の場所で生活なんてできない。道路自体は必要なので、ルート変更してもらいたい」と話す。また、会の男性は「西田町長は役場で住民説明会が行われたとき、町長自ら一軒ずつ説明に回ると言っていたが、実行されていない」と憤る。

同町は平成23年に紀伊半島大水害を経験しており、同道路は災害時の「命の道」として効果が期待される。このため、町長選に立候補予定の両氏は共に、道路建設には賛成している。

だが、同会共同代表の一人でもある平野氏は「道路自体は必要だが、住民の意見が反映されていないルートはおかしい。町長に当選したら、引き続きルート変更を求めていく」と語る。

一方、西田町長は「すべての人がもろ手を挙げて道路を完成させることは困難。苦労したが完成してよかったと言えるようにしたい」とし、現路線で「住民の方にご理解いただけるように努力していく」と話している。

国交省紀南河川国道事務所の担当者によると、現在の海側ルートは20年に三重、和歌山両県の2万2232世帯、423企業、32団体を対象にルートなどに関するアンケートを実施し、8割が妥当とした結果が決め手の一つになったと説明する。また、事業化された後も町内で自治会や住民らに対する説明会を8回開いているとして、「きちんとした段階を踏まえて現在のルートに決めた。変更は不可能なのでご理解いただけるよう努力したい」と話している。

現在、国、県、町は用地取得を進めている。町によると、町内の用地買収対象は250筆で、35筆が契約済み(昨年11月20日現在)。国交省の担当者によると、三重、和歌山両県の用地取得率は合わせて17%(同11月末日現在)という。

昨年12月23日には新宮市で起工式が行われた。「道路は必要」という共通認識がある中、用地取得への住民の理解と協力がなければ道路は完成しない。いつ起こるか分からない災害に備えるため、道路の早期完成に向けて首長の強いリーダーシップが求められている。