2018年1月1日(月)

イヌ年だというのに―。猫の飼育数が昨年末の調査で、犬を初めて上回った。最古の家畜として1万5千年前から苦楽を共にしてきた犬が、たかだか5千年前に勝手に舞い込んできた猫に見限られた格好。犬のうらめしげな目が浮ぶ

▼犬が飼い主に尽くすいちずさは涙ぐましいほどだ。娘が家族旅行などで老齢の愛犬を預けていくが、終日玄関に座り込んで迎えを待っている。小柄で足元もおぼつかないくせに他人、特に犬には露骨に敵意を見せる

▼この性質を人類に利用されてオオカミから飼いならされ、今も牧羊犬、警察犬、盲導犬、番犬として人類と並走している。猫などは楽して食い物にありつけそうだと人間の生活圏にやってきて、ネズミを捕る生態を重宝されたとはいえ、自分勝手に振る舞い、逆にそれが人間に愛されている

▼たとえば夏目漱石である。ヘクトーというギリシャ神話の英雄に通じる名の愛犬がいるというのに、小説として取り上げたのは名前もない猫である。エドガー・アラン・ポーの「黒猫」にしろ、ホフマンの「牡猫ムルの人生観」にしろ、猫は多彩な顔を見せて文学作品にさんぜんと輝く。犬はハチ公物語の域を出ない

▼昨年は羽根をバタバタする騒がしい一年の予感が当たった。トランプ米大統領はじめ騒がしい主役が世界を不安に陥れ、〝○○のトランプ〟〝○○ファースト〟を伝搬させた。安倍晋三首相も森友・加計学園問題で騒がせた当事者の一人。国難を言い立てて解散を強行した

▼今年はその結果の「一強」をみんなが従順な「多弱」になって支える悪夢を見て、悪寒がする。