2017年10月30日(月)

▼先週の台風で、土砂崩れで無残につぶれた多気町公民館の写真が生々しい。視察している鈴木英敬知事の新調した防災服と、ちぐはぐなコントラストをなす

▼「あらためて被害の大きさを実感した。全力で復旧に努めたい」という。実感はまったく同じだが、続いて似たコースを台風は迫る。今度直撃されたら大丈夫か、一抹の不安を感じた

▼知事が就任前に災害ボランティアとして現地入りして活動した東日本大震災は「復旧」と「復興」が別々のものとして捉えられていた。単に損壊したものを旧に復するのではなく、新しく作り替えてよりよい街にする。復興庁は、がれき処理やインフラ整備を「復旧」、高台移転事業や事業者、求職者への支援、二重ローン解消などを「復興」として区分した

▼復旧から復興へが事業推進の政府の合い言葉であり、知事も東日本大震災支援を語る時「復興」という言葉を使ってきた。就任一年目の紀伊半島大水害では、しかし「復旧」と言い続けている。「復旧対応体制の整備」計画を策定。熊野建設事務所の中に「災害復旧室」を置いた

▼「機能回復のみを目的とした通常の災害復旧事業だけでなく、再度の被災を未然に防ぐための改良事業に取り組む」と語っていたのは「復興」の考え方が知事の頭にまだあったからだろう

▼あれから六年。多気町公民館への避難住民は異変に気づいて間一髪逃げたという。避難所が安心・安全の場になっていない。紀南高校浸水は「紀伊半島大水害の時も」だと知事はいまさらながら「再発防止の検討を」。今度こそ「復興」をお忘れなきよう。