<まる見えリポート>相次ぐ振り込め詐欺被害 傾向は架空請求型へ

【店舗で販売されている電子マネー(左下)と被害防止に向けて作成した封筒=県警本部で】

振り込め詐欺の被害が止まらない。三重県内では今年、9月末現在で145件(前年同期比40件増)の振り込め詐欺被害が発生し、被害総額は約1億9770万円(同約8710万円減)にのぼった。被害総額こそ前年を下回ったが発生件数は前年より増えており、一件当たりの被害額が少ない架空請求詐欺が増加傾向にあるという。

(県警・小林 哲也)

県警生活安全企画課によると、昨年被害が多発した還付金等詐欺は、今年は9月末現在16件(同23件減)、被害総額約1370万円(同約2240万円減)と減少しているが、架空請求詐欺は86件(同53件増)、被害総額約9780万円(約4970万円)と件数が増えている。

同課担当者は「一件当たりの被害額は少ないが、幅広い年代がターゲットでリスクの少ない架空請求詐欺に移行している」と話す。

代表的な架空請求詐欺の手口に、「アマゾンギフト券」をはじめとする電子マネー型がある。

ある日突然、被害者の携帯電話に「有料動画の未納料金が発生しています。本日中にご連絡なき場合、法的手続きに移行します」といった内容のショートメールなどが届く。併記された連絡先に電話すると、「コンビニで電子マネーのギフトカードを買って裏面の番号を教えて欲しい」といった指示があり、これに従う形で数万―数10万円の被害が発生する。インターネット接続の普及や、法的措置への焦りなどから、全国的に被害は増え続けている。

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背景には、これまで主流だった「還付金等詐欺」への対策強化が一つにあるとみられている。

還付金等詐欺による被害者の9割以上が高齢者だったことを受けて、県内の信用金庫4行が今年1月から、地銀3行は5月から6月にかけて、過去一定期間(1年半―3年間)にわたってATM(現金自動預け払い機)の取引履歴のない70歳以上の高齢者を対象とした振込制限を実施。9月からは信金1行も新たに取り組みに加わり、県内全ての信金、地銀で高齢者によるATMの振込が制限されるようになった。

また県警では昨年、不審な電話に対して警告メッセージを流しながら音声を録音する「自動通話録音警告機」を360台購入し、津・四日市地区の高齢者世帯に先行貸与する事業を実施した。事業が終了する今年12月以降は、機器を回収し、各警察署を通じて希望者に無料貸与する予定という。

同警告機の利用世帯に実施したアンケート調査では、約9割が「詐欺等の被害防止に有効だった」と回答。同じく約9割が「機器の設置により不審電話が軽減した」とし、ほぼ全員が「設置後の被害はなくなった」と回答したという。

被害未遂者の協力による「だまされた振り作戦」による摘発事例も増えている。県警捜査二課によると、オレオレ詐欺などの事案に対する昨年の同作戦による摘発実績5件6人に対し、9月末現在の摘発実績は7件7人。中には十代の高校生も含まれていた。

同作戦のような捜査で摘発されるのは、直接現金を受け取る「受け子」やATMなどから現金を引き出す「出し子」と呼ばれるグループ末端が大半だが、警視庁と合同で捜査したキャッシュカード詐欺事件では、犯行を主導した実行犯的立場も逮捕に至った。

捜査関係者は「被害者に負担を掛けるという課題はあるが一定の効果はある。こうしたリスクから、表に出ない架空請求詐欺に移行しているのでは」と分析する。

県警は今月11日から、電子マネー型の架空請求詐欺対策として、県内に出店する全コンビニ825店舗に協力を呼びかけ、電子マネー購入時に詐欺への注意を呼びかける文言を記載した封筒を添える取り組みを開始する。

県警生活安全企画課の野呂寿夫次長は「詐欺グループも時流に合わせて新たな手口を使ってくる。色々な対策を取り入れて幅広く被害防止に向けて啓発していきたい」と話した。