<まる見えリポート>宿泊券は商品券か ふるさと納税返礼品見直し

【ふるさと応援寄付金のホームページには志摩市の宿泊券の中止を知らせる表示がされている。】

【鳥羽・志摩】昨年五月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催を追い風に、好調が続いてきた志摩市と鳥羽市のふるさと応援寄付金がいま、岐路に立たされている。全国的に過熱する返礼品競争が議論を呼び、総務省が四月、寄付者の寄付額に対する返礼品の価値に当たる「返礼率」を三割以下とし、商品券を廃止するよう求める通知を出したためだ。両市の返礼品では宿泊券が申込数トップを占めており、宿泊券が商品券に当たるか否かで、両市の対応が分かれた。

(渡邉恭晃)

 志摩市はサミット開催決定で注目が集まり、平成二十七年度の寄付額は県内トップの六億七千三百万円を突破。昨年度も好調を維持し、七億八千万円となった。鳥羽市も順調な伸びをみせ、昨年度の寄付額は約五億四千七百万円に上り、県内上位に食い込んだ。

さらに寄付額を伸ばそうと、返礼品の充実などにも力を入れてきた両市。志摩市は伊勢志摩サミットで各国首脳に贈られた真珠のラペルピン(五十万円)を昨年七月に追加。鳥羽市も特産品アワビや伊勢エビと友好都市・兵庫県三田市の三田牛をセットにした「海の九鬼、山の九鬼」(六万円)を加えるなど、地域の特産品や魅力発信にも期待が寄せられている。

だが、ふるさと応援寄付金制度を巡り、返礼品競争を疑問視する向きもある。制度では寄付額から二千円を差し引いた金額の税控除が受けられるため、一部の自治体で税の流出が問題となっている。

四日市市では平成二十七年度、寄付の受入額が約九百四十万円だったのに対し、市民の税控除額は約一億三千九百万円となり、市は今年四月、財源が流出していると「非常事態」宣言を出した。森智広市長は「地域を応援する趣旨から外れ、過度な返礼品競争による寄付金の競争合戦になっている現状に割を食った」と批判した。

総務省は四月、行き過ぎた競争に歯止めを掛けるため、返礼品を寄付額の三割以下にとどめ、家電や商品券を廃止するよう全国の自治体に通知を出した。

宿泊券は商品券か否か。志摩市の寄付額で約25%、鳥羽市で約50%を占める人気の返礼品だが、両市ともに返礼率が三割を超える五割だった。志摩市は総務省の通知を受け「宿泊券が商品券に当たる」として廃止した一方で、鳥羽市は返礼率を三割に引き下げるなど一部見直すことで継続している。

志摩市の担当者は「宿泊券がなくなり四月からの申込が少し落ち込み、大きな痛手だ。返礼品の入れ替えなど見直すつもりだが、以前のような好ペースへの持ち直しは期待できない」と表情を曇らせる。「ただ、地域の特色を生かし、産業を活性化につなげるのが本来の目的。今後もふるさと応援寄付金のPRをしていきたい」と気を引き締めた。

鳥羽市のふるさと応援寄付金を運営する市観光協会の担当者は「宿泊券は商品券に当たらない。鳥羽を好きになって、来たいと思って申し込みしてくれており、寄付者と地域をつないでくれる返礼品だ」と説明した上で、「総務省の通知に強制力はなく、全国的に返礼率が高いものがまだまだある。ルールを守った方が損をするような現状では変わらない」と語った。