<まる見えリポート>女性警察官の進出 初の女性機動隊員、特性に期待

【県警初の女性機動隊員として訓練に励む川口さん(手前左)と早川さん(右)=津市の機動隊庁舎で】

男女共同参画社会基本法の施行から十八年。まだ十分とは言えないまでも、少しずつ女性の社会進出の場は広がりつつある。県警でもことし初めての女性機動隊員が誕生し、女性警察官が重要な役割を占める人身安全対策課が新設されるなど受け入れ体制が整い始め、女性ならではの活躍に期待が寄せられている。

(県警担当・小林哲也)

警察庁は女性警察官の採用・登用の拡大に向けて、平成三十三年四月までに全警察官に対する女性警察官の割合を10%とするよう各都道府県警に求めている。

県警警務課によると、二十八年四月現在の三重県警の女性警察官の割合は9・5%で、全国平均の8・5%を上回り全国で二位となった。ことし四月現在の女性警察官の割合は9・9%と、目標をほぼ達成しつつある。

県警機動隊にはこの四月、史上初の女性隊員が二人誕生した。背景には女性ならではの心遣いや感性を、警備や災害救援活動の場に生かしたい狙いがある。

同隊旧庁舎にはこれまで女性用の設備がなく、ほぼ男性専用の職場と言えるような状況が続いていた。施設の老朽化に伴い、この四月に完成した新庁舎には女性寮や更衣室、トイレやシャワー室などが設けられ、ようやく女性隊員の受け入れ体制が整った。

入隊した四日市市出身の川口理絵さん(26)=巡査長=と、愛知県扶桑町出身の早川久美子さん(24)=巡査=はともに剣道有段者で、国体代表選手を見据えた特別練習生に選ばれた実力者。普段は剣道の稽古に励む一方、男性隊員と同様に警備や災害救援に向けた訓練に参加している。

新卒二年目の配属となった早川さんは「怖いとか堅いというイメージの機動隊で、女性としての特性を見つけて行動の幅を広げていけたら」と話す。川口さんは「女性という立場から、現場でも下がるよう気を遣われて『そんなに弱くないのに』と悔しい思いをしたことがあった」と振り返り、「ここでは変に気を遣われることもない。力では男性に勝てないが、女性として自分しかできないことを探したい」と語った。

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全国的に増加傾向にあるストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)、虐待などに対応するため県警本部はことし四月、人身安全対策課を新設した。定員三十四人中、女性警察官七人という数字は、各課と比較しても高い。事案の特性上、被害者が女性や子ども、高齢者など弱い立場が多く、女性ならではの繊細な気遣いがより重要となる。

同課で人身安全対策第一係長を務める村山ゆかりさん(49)=警部補=は、前身の係から虐待や暴力事案の対処と防止、被害者保護に関わってきた。あるDV被害のケースでは、複数の男性捜査員からの質問でパニック状態となった女性を落ち着かせるため、二人きりで関係作りに苦心したこともあったという。

男性への恐怖から女性捜査員の対応を求めるケースがある一方、「女性では不安」として男性捜査員の対応を求めるケースもある。村山さんは「女性だから、男性だからという偏見を極力持たず、被害者が真に求めるものは何かを見極める必要がある」と話す。

県警では昭和五十八年に女性警察官第一期生が誕生した。当時は十四人と全体の1%に満たない数字だったが、現在は約三百十人の女性警察官が県警に所属。平成二十三年には亀山署地域課長として女性警部第一号が誕生し、現在七人の女性警部が活躍している。

村山さんは第四期生として、昭和六十一年に県警入りした。当時から現在までを振り返り、「まだ男性上位の感覚は否めないが、昔は女性が行けなかった職場に女性が勤務し、女性幹部が増えるなど待遇の改善は感じる。今後は女性自身もスキルアップして職責を持つことが重要」と語った。

ワークライフバランスの推進を背景に、県警内でも育児休暇などの支援制度を利用するハードルが下がりつつある。警務課の中西通次長は「男女限らず昇任意欲を持って活躍したい人が、安心して活躍できる職場を作りたい」と話した。